ヒドロモルフォンによる薬剤性ミオクローヌスを呈した胃癌患者の1例

日本内科学会第247回近畿地方会
京都テルサ
2025年3月8日

ヒドロモルフォンによる薬剤性ミオクローヌスを呈した胃癌患者の一例
1)洛和会音羽病院緩和ケア内科 2)同 総合内科
井上 鐘哲1), 原田 秋穂1) 山代 亜紀子1) 酒見 英太2)
【症例】82歳,女性.
【主訴】心窩部痛・背部痛
【現病歴】胃癌Stage4,多発肝転移. 正球性貧血を伴うCKDもあり. 入院2ヶ月前より積極的抗がん治療は行わない方針となり,心窩部痛・背部痛に対し,在宅でヒドロモルフォン徐放錠4mg/日を内服していた. 入院1週間前から倦怠感,せん妄が出現したため緩和ケア病棟に入院した.
【臨床経過】入院時,NRS 3/10の心窩部痛,NRS 4/10の背部痛を認めたため,ジクロフェナク貼付剤を開始した. 入院2日目にヒドロモルフォン徐放錠を6mg/日に増量したところ,翌日に痛みは軽減した. 入院5日目夕に,両手指,両前腕の間欠的な不随意運動が出現し,翌日以降も続いた. ミオクローヌスと考え,ジアゼパム,フェノバルビタール投与で対応した. 入院7日目,Cre 3.0mg/dL(1ヶ月前Cre 0.8mg/dL)の急性腎障害を認めたため,ヒドロモルフォンによる薬剤性ミオクローヌスを疑い,オキシコドン持続皮下注4.8mg/日に変更し,入院9日目以降,ミオクローヌスは消失した. 入院17日目に,胃癌の進行により,永眠された.
【考察】ヒドロモルフォンは,腎機能低下がある患者に対して副作用を来しにくく使用しやすいとされる一方,その代謝物H3Gに強力な神経興奮作用があり,ミオクローヌス,痙攣,せん妄を呈する副作用がある. H3Gは腎排泄であるため,本症例の様に腎機能低下があると,少量,短期間の投与においても,ミオクローヌスが出現することがあるため,注意が必要である.