日本内科学会第246回近畿地方会
大阪国際交流センター
2024年12月14日
尿管癌による悪性腸腰筋症候群に対して緩和的放射線療法が奏効した一例
1)洛和会音羽病院 緩和ケア内科
2)洛和会音羽病院 総合内科
井上 鐘哲1), 原田 秋穂1) 山代 亜紀子1) 酒見 英太3)
【症例】77歳、男性。
【主訴】腰痛、右股関節痛。
【現病歴】右尿管癌StageⅣ、下大静脈後面リンパ節転移に対して積極的抗がん治療は行わず経過観察となっていた。5ヶ月前から下腹部痛、腰痛が出現したため、在宅でのヒドロモルフォンによる鎮痛が開始されていた。1ヶ月前から腰痛が増悪し、腰部に電気が走るような痛みと、右股関節痛が出現した。1週間前から両下肢浮腫も出現したため、疼痛緩和目的で緩和ケア病棟に入院した。
【臨床経過】入院時、体動で増強する腰痛、右L1〜4神経領域の神経障害性疼痛、右股関節伸展時痛を認めた。腹部CTで腫瘍浸潤による右大腰筋腫大を認め、悪性腸腰筋症候群(MPS)と診断した。下大静脈への腫瘍浸潤も認められ、悪性下大静脈症候群も呈していた。入院翌日より合計線量22Gyの放射線治療を施行したところ、第7日に下腿浮腫が軽快し、第8日に腰部体動時痛がNRS10から7に改善、右股関節痛もNRS4から0に改善し、第10日に自宅へ退院された。
【考察】MPSは薬物療法のみでは痛みの緩和が困難であり、放射線治療の併用が効果的である。診断には画像検査が必須であり、痛みの性状が変化したときに考慮すべきである。MPSの迅速な診断のためには、在宅医療と病院の緊密な連携が重要である。