日本生理学雑誌 への「医学生生理学クイズ2017(PQJ2017)開催報告」掲載のお知らせ

日本生理学雑誌 第79巻4号(2017年11月)に、「医学生生理学クイズ2017(PQJ2017)開催報告」が掲載されました。
井上が、PQJ2017の目的と成果、裏話、苦労話などを書いています。PQJ2017に参加された方、来年のPQJに参加を考えている方、学生主体のクイズ大会の開催を考えている方など、みなさんぜひお読みください。

日本生理学雑誌 第79巻4号(2017年11月)
http://physiology.jp/nisseishi/20326/

井上鐘哲「医学生生理学クイズ2017(PQJ2017)開催報告」日本生理学会雑誌第79巻4号 P.78-80

 

日本生理学会雑誌第79巻4号 P.78-80

医学生生理学クイズ2017(PQJ2017) 開催報告
医学生生理学クイズ2017共同代表 井上鐘哲(大阪医科大学医学部4年)
2017年8月3日

1 強烈な学習体験としてのクイズ

図1 PQJ2017参加者

“Here is the moment of truth. Are you ready for the final question?”

 講堂に響く司会者(僕)の声。最後のクイズの答が発表されると100人以上の観衆から歓声が湧き、優勝チームが決定した。
今年4月、大阪医科大学では医学生生理学クイズ2017(PQJ2017)が行われた。日本全国、そして海外から16大学21チームが出場し、100人を越える医学生達が生理学の知識を競った。
僕達が日本で2回目となるこのクイズ大会を開こうと思ったのは、医学生に忘れられないくらい強烈な学習体験をしてもらう為である。人間の記憶力は、緊張状況で高まることが知られている。クイズ大会のプレッシャーの元で取り組む難解な生理学の問題は、参加者の脳裏に深く刻まれる。その記憶は今後の医学部での学習、医師国家試験受験において彼らを助け、ひいては将来の診療で患者さんを救うことに繋がっていくだろう。
意外に思われるかも知れないが、全国の医学生が集まる機会は非常に少ない。僕たちは、全国から医学生が集まり交流し、人脈を築いていけるような大会を作ろうと考えた。既に海外にはIMSPQ(マレーシア等)やSIMPIC(タイ)のような医学生の為のクイズ大会が存在し、アジア全域から多くの参加者を集め、医学生が国際的な人脈を築く機会になっている。PQJもそれらを模範とし、海外の医学生も参加してもらえるように全て英語でクイズ、大会運営を行うこととした。

2 クイズショーを作り上げる
PQJ2017の準備は、ほぼ1年前の昨年5月から始まった。僕には密かな勝算があった。関西には大阪医大を含めて12校も医学部がある。これらを呼ぶことができれば、大会の成功は約束されたような物である。まずは大会ポスターを作り、近隣の医学部から貼ってまわった。医学生が集まるイベントには必ず大会チラシを持っていき、大量に配った。ホームページを立ち上げ、大会の準備の模様を報告した。ありがたかったのは、大学側の全面的な支持である。特に大槻学長は大会の趣旨を聞くと二つ返事で金銭的物的支援を行うことを約束してくれた。スポンサーとなってくれるそうな医療系企業、医療機関へは、片っ端から企画書を持ち込んだ。最終的にスポンサーは10社1医療機関を数え、賞品総額30万円以上が集まった。日本生理学会にもホームページでご紹介してもらい、いよいよ大会の知名度は高まり、出場登録するチームは徐々に増えていった。
クイズ問題は、本学生理学教室小野教授の指導の元に作っていった。解剖学、生化学、免疫学、薬理学など基礎医学科目は生理学と関連が深く、教育的観点から出題範囲は生理学を含む基礎医学全般とした。クイズは早押しクイズと、チーム全員で答えるフリップクイズの2種類とした。出題は全て英語で行うことで、外国からの参加者にも公平な条件とし、日本人参加者の英語教育の効果も狙った。


図2 クイズの模様

 クイズの演出には徹底的にこだわった。エンターテインメントに徹したクイズショーを作り上げてこそ、参加者に緊張感を与え、落胆や歓喜を引き出し、強烈な学習体験を与えることができる。チームの入退場時のテーマ、効果音の選定、問題読み上げ係への海外帰国学生の起用など、細部にこだわった。実に10回に及ぶ模擬クイズを行い、司会とスライド係等との連携を高度な次元まで磨き上げた。飾り付けには、研究発表用のプリンターを特別に使わせてもらい、長さ5mに及ぶ巨大な垂れ幕を印刷し、いよいよ会場の準備は整った。

3 医学生の交流の場
大会当日、北は東北大学、南は長崎大学、そして海外は台湾大学まで、16大学21チームが大阪医科大学に集まった。午前中から2会場に分かれて予選が行われ、我々の作成した難問の数々に、参加者は一喜一憂しながら挑んでくれた。僕は蝶ネクタイとスーツに身を包み、司会の大役をこなした。真剣勝負の合間の英語での出場者との冗談のやり取りには、たびたび観衆から笑い声が上がった。全てのクイズ問題は正解の発表直後に司会が解説し、参加者、観衆の理解を助けるようにした。日本生理学会からは群馬大の鯉淵先生、西九州大学の石松先生、そしてマレーシアから特別顧問の国際医学生クイズ創始者Cheng Hwee-Ming先生がご来場され、本学の小野先生と共に審判を務めていただいた。
予選グループ6試合の結果、接戦を勝ち抜いた10チームが準決勝に進んだ。準決勝からはクイズの難易度はさらに上がり、ハイレベルな争いとなった。決勝に進んだチームは、大阪大学、滋賀医科大学、自治医科大学、国立台湾大学、藤田保健衛生大学の5チームであった。決勝は、司会の僕が圧倒されるくらいの緊張感漂う一戦となり、最終的に大阪大学チームがわずか2点の差で国立台湾大学チームに競り勝ち、栄えあるチャンピオンの座に就いた。
優勝チームには、優勝カップ「Otsuki Cup」が与えられ、スポンサーから両手に抱えきれないほどの医学書や電子辞書が贈呈された。「この大会を用意してくださった大阪医大の皆様や、一緒に戦ってくれたライバルの皆様に感謝の念でいっぱいです。プレッシャーがかかる中で問題を解くのは刺激的で、もっと勉強したいという気持ちになりました」優勝した大阪大学チーム代表、田上陽菜さんの言葉である。
クイズの合間や終了後のパーティーでは、参加者の輪が会場のあちらこちらに自然にでき、活発な交流が行われていた。参加者アンケートの結果を見ると、「医学の勉強になりましたか」という質問に5段階で5をつけた人が89.7%、同様に「PQJ2017は楽しかったか」という質問に対しては81.4%が5をつけ、参加者を十分に楽しませながら、高い学習効果を達成するという目標に合致する感想が得られた。また、「自分に足りなかったものは?」という質問に対する回答(図3)は、英語のリスニング力(21.4%)、生理学の英単語の知識(21.4%)、生理学の勉強(21.9%)が上位を占め、参加者が大会を通じて自身の学習課題を認識したことをうかがわせた。

図3 アンケート結果の一例

僕の予想を裏切ったのは、関西のチームが3校しか参加しなかった代わりに、東北大、金沢医科大、徳島大、長崎大など、比較的地方にある大学が多数参加してくれたことである。実際、アンケート結果からは首都圏や関西圏以外の医学生の方が、医学生同士の交流の場を強く求めていることがうかがえ、彼らに全国的な交流の場を提供する本大会の存在意義は高いと意を強くした。
2018年5月19、20日に鳥取大学医学部で行われるPQJ2018が、今から楽しみである。

参加大学

東北大学 東京慈恵会医科大学 自治医科大学 藤田保健衛生大学 三重大学 金沢医科大学 金沢大学 滋賀医科大学 大阪大学 近畿大学 大阪医科大学(4チーム) 徳島大学 岡山大学 鳥取大学(2チーム) 長崎大学(2チーム) 国立台湾大学

参加者数


クイズ出場者 78人 オブザーバー(見学者) 17人 招待客 5人
合計 100人

後援
大阪医科大学、日本生理学会

PQJ2017公式ホームページ
http://bit.ly/pqj2017

井上鐘哲(PQJ2017共同代表)