University of Oxford 医学部留学 Part 6

“I’m a medical student. Would it be all right if I took blood from you?”

朝の病棟、緊張しながら患者さんに声をかける僕。

オックスフォード大学では患者さんの採血は積極的に学生が行うことを求められています。Acute General Medicineの僕の班の医学部4年生の学生達も、病棟回診中に声がかかればそれぞれ採血を行い、終わったら回診にまた合流します。

こちらに来て2週間、なかなか採血の手をあげない僕にオックスフォードの学生は何度も聞いてきました。Akiは何で採血しないの? え、日本では医学生は採血しないの? どうして?

どうしてでしょうか? 僕にもわかりません。

とりあえず、他の学生の採血には必ず付き添って、どういう風にナースステーションで道具を揃え、どういう風に患者さんに声をかけるか、どうやって手頃な血管を探し、穿刺し、シリンジを取り替えるか、観察をして来ました。
僕と同じくオックスフォードに実習に来ている学生と、採血の練習をしたりもしました。しかし患者さん相手の採血にはいまだに尻込みする自分がいました。

今朝、同僚のフランの採血を見た後、次の採血はどうするの?と聞かれました。
どうしよう? このまま観察しっぱなしで日本に帰るのか?

「I’ll do the next today.」
タイミングよく指導医の先生から採血の声がかかり、僕は思い切って手を上げました。

道具を揃え、冒頭のように患者さんに許可をもらい、目標の静脈を確認し、翼状針を握りしめて、緊張しながら患者さんの肘正中皮静脈に穿刺しても、逆血がなぜか見えません。不安でいっぱいながらも、付き添ってくれてる同僚のフランに励ましてもらいながら、真空シリンジをホルダーに差し込む。暗赤色の静脈血がシリンジを満たして行くのが見えたときは、心底ほっとしました。

患者さんに感謝を伝え、ミーティングで指導医に、患者さんからの初めての採血が1回で成功したことを伝えました。「Great! それじゃ、もう一人お願いできるかな?」

次の採血の患者さんも、1回めの穿刺で採血ができました。このときも、付き添ってくれた同僚のレックスがシリンジの交換を助けてくれました。

採血中、オックスフォードの学生が隣でアシストしてくれたのは本当にありがたかったです。一人ではできないことも、こうやってチームでお互いから学び合えることのありがたみをひしひしと感じました。今日手伝ってくれたフラン、レックス、ありがとう。

今日はたまたま運がよかっただけなのはよくわかっています。今後も毎日採血をして、なるべく患者さんに苦痛を与えないような採血のスキルを身に着けて帰りたいと思います。

井上カネアキ

(写真はオックスフォード大学の図書館の一つ、Radcliffe Camera)