臨床研修マッチング アンマッチ体験

今から約1年前、僕はMacbookの画面の前で途方に暮れていました。
臨床研修(初期研修)マッチングの発表日、僕を採用してくれる病院がなかったのです。
僕はだいぶ遠回りして再受験して医学部に入りました。とは言え、クラスの成績は毎年5番以内をキープし、6年間一つも単位を落としたことはなく、部活の主将を努め、医学生生理学クイズを主催し、Stanford大やOxford大医学部に留学し、学会発表を2回行い、家庭医療の国際学会では優秀賞を受賞しました。
これだけ精一杯やったのだから、少なくとも、どこかの病院は採用してくれるだろうな、と楽観していました。

 

その考えが甘かったことを思い知らされたのが1年前のこの日だったのです。
僕が志望した病院は、誰もが知るような有名市中病院ばかりでした(大学病院は母校含め受けませんでした)。優秀な医学生ばかり受けるわけですから難しいのは当然として、それ以前の問題として、僕は春夏休みをほとんど留学に当てていたこともあり、それぞれの病院に1回しか病院見学に行っておらず、人間関係を築く努力をあまりできていなかったと思います。

 

ショックで放心状態になった僕は、とりあえずお世話になっていた大阪医大の小野富三人先生や鈴木富雄先生、獨協医大の志水太郎先生らに起こったことを報告しました。そのときに先生方から帰ってきた温かい言葉の数々は、一生忘れることがないでしょう。

 

気がついたら、僕はボロボロながらも何とか立ち直っていました。その日のうちに、定員がまだ空いている病院に片っ端から電話をかけ、病院見学と面接の予約を入れていきました。

 

マッチング発表翌日、朝一番に見学に行った病院が、僕が現在研修中の病院です。

 

研修を初めて半年、規模の割に患者さんが多い病院で、多くの世話好きな指導医と同期の研修医に恵まれ、救急や病棟で多くの患者さんを診ることができ、充実した毎日を過ごしています(ちなみに給料も大阪ではかなり良い方に入ります)。
先月には内科学会地方会で学会発表を行い、来月には別の学会発表を控えています。

 

明日の午後2時、この文章を読むみなさんの中にもマッチング先が決まらない人がいるかもしれません。
僕はその人に向けてこの文章を書いています。
悔しいと思います。僕も落ち込みました。しかし1年後、僕はこれ以上ないくらい自分の選んだ道に満足しています。

 

転んでも、足を動かし続ける限り、いつかあなたは自分にふさわしい場所にたどり着くでしょう。
頑張ってください。

 

『フレームワークで考える内科診断』翻訳について

この度、来年発行される下記の本の第11章「甲状腺機能低下症」の翻訳を私、井上カネアキが担当させていただきました。
『フレームワークで考える内科診断』監訳 田中竜馬先生, MEDSi社, 2021年6月発行
原題 “Frameworks for Internal Medicine” , Dr. Andre Mansoor, Wolters Kluwer, 2019
この本は、よくある医学教科書と違い、症例が提示され、それに関する質問と回答がひたすら続くと言う対話形式で作られています。
甲状腺機能低下症の場合、「甲状腺機能低下症の症状は?」から始まり、「身体所見は?」「この疾患を疑ったとき、最初にすることは?」「血漿TSH値が正常なら、何を疑う?」と質問は徐々に具体的になっていきます。
まさにカンファレンス形式の勉強会に参加しているような感覚で、内科の各分野を独習で学ぶことができます。特に研修医、医学生のみなさんにお勧めします。
今回、貴重な機会をいただいた田中竜馬先生とメディカル・サイエンス・インターナショナル社に感謝します。

日本内科学会近畿支部第229回近畿地方会 口頭発表

臨床研修が始まって5ヶ月、医師になって始めての学会が終わりました。
この3ヶ月間、文献、データと取っ組み合って悪戦苦闘して来ました。
スライドを作りすぎて練習では8分かかってたのに、同じ日に発表する同期の吉田先生と毎日練習したおかげか、本番では5分以内でしゃべることができました。
質疑応答ではありがたくも質問を3つもいただきましたが、作りすぎて隠しておいたスライドが役立って、何とか答えることができました。
若手奨励賞候補にはなりましたが、優秀賞には届きませんでした。しかしわずかでも、若年心筋梗塞患者を減らす一助になれたかなと思うと充実感でいっぱいです。
毎週のように研究指導をいただいた守上先生、また北口先生、竹中琴先生、院長先生、研修医の先輩や仲間に感謝です。

日本内科学会近畿支部第229回近畿地方会
セッション 若手奨励賞(初期2)11:10-12:20
演題番号68
「家族性複合型高脂血症が疑われた若年急性心筋梗塞の一例」
井上 鐘哲